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密を避け鬱にならないために
2021-02-16おすすめ
福田
「密を避け鬱に」は野田秀樹の言葉です。
例の疫病はまだしばらく居座りそうです。
色々注意は必要ですし、慎重さが求められますが、
深刻になったり、神経質になったり、
それこそ鬱にならないようにしたいものです。
さて今回は「密」に関する体験談を2つ。
写真はいずれも私の蔵書から。
たまたま3冊とも70年代の本です。
左の写真はグレッグ・ブライト『迷路の本』より、
穴あき迷路のページ。
小学生の時買ったので40年以上前の本です。
藤原新也『印度拾年』より。
20年くらい前に買いました。
もう30年以上前の話ですが、インドの列車の中で。
車両は進行方向左が通路、右がボックス席で、四人掛けの席が向い合せにあります。
私はかろうじて座れましたが満員でした。
その満員さが凄く、覚えておこうと思い、正確な数を記憶しました。
まず、四人がけの席に6人座ってます。
お尻は片方しかシートに着かず、片方は浮いてます。
それだけできついのに、さらに我々の背と背もたれの間に2人が横向きで挟まってます。
赤の他人8人(大人)がぎゅっといて、向かいの席も同じくらいいます。
深夜、無数の子供を連れた女性が来ました。
席は無く、通路も満員で、我々のボックス席に入ってきました。
座っている我々は背に2人もいるので前に押し出され、向かいの人と膝がぶつかりそうです。
さらに各自の荷物も床にあるので、実質空間は無いのですが、そこに女性は強引にしゃがみこみました。
次に無数の子供たちを次々我々の脚の間に押し込み始めました。
実際子供は何人いたか、せいぜい4~5人だったかもしれませんが、10人以上いた印象です。
どの子もまだ小さく、夜中なので眠くてぐったりしています。
そこからが大変でした。
眠たかったり寝たりで足が動き、子供の身体や顔を蹴ってしまいます。
すると小さな子供は大きな声で泣き出し、女性(母)が蹴ったヒトを怒鳴りつけます。
怒鳴られて大人しくしているインド人はいません。
激しい応酬となります。
その間にも、別の足が別の子供に当たり、また泣き声が上がります。
女性は喧嘩を続けながら、別の男性も怒鳴りつけます。
怒鳴られた方は言い返し、新たなバトルが始まります。
今度は通路を無限に往復している物売りが子供の足を踏みました。
泣き叫ぶ子供の足をさすりながら女性は物売りを怒鳴りつけます。
物売りが言い返します。
私の足の間の子供が小便を漏らし床の荷物が濡れました。
子供のことだ、しかたない、と平和な東京なら思えますが、
インドの蒸し暑い狭い車内で四人用の席に8人でいる眠いけど眠れない深夜に、そんなゆとりはありません。
私はカッとなって彼女に抗議しました。
彼女は素直にすみません、などともちろん言わず私に怒鳴り返します。
もう車内は火薬庫のようにどんどん怒りが爆発しました。
女性は子供を泣かせた相手に怒鳴り、怒鳴られたら無視せず怒鳴り返し、相手が引くまで絶対引かず怒鳴り、
それらを同時進行で何人もを相手に続けます。
この騒ぎがどのくらいの時間かかったか覚えていません。
気付くと、だんだん音が消えるように私の怒りは収まり、代わって、
女性に対し畏敬の念が生まれていました。
彼女は(まだ20代だったかもしれません)泣く子をあやしながら周りを敵に戦い続けるのです。
私も含め、誰も彼女を味方しません。
深夜で本人も疲れているはずが、周囲の男たちにまったく怯まず、たった独りで戦っているのです。
今、目の前に凄いものを見ているのではないか、と私は気付き始めたのでした。
これは人生初の海外旅行の初めの方の出来事です。
後日、インドの列車でさらに壮絶な体験をすることになるのですが、その話はまたいつか。
中川幸夫『華』より
30年前に知ったのですが、当時の私に定価48,000円は恐ろしいく、手が出せませんでした。
古書市場では10万円以上することもあったそうですが、
中川さんは師匠でもあるので、いつか手に入れたいと思ってました。
去年ブックオフで37,000円で買いました。
ブックオフ大好きです。
これも随分前のことですが金曜の夜の渋谷発、井の頭線急行で。
渋谷駅で乗ったところ、超満員でどんどん押され抵抗できないまま奥に押し込まれ、
そのまま座っている若い女性の膝の上に座ってしまいました。
もちろんすぐ立とうとしましたが、さらに私の上にも人が来そうなくらいの満員です。
それを押しのけて立ち上がるのは無理でした。
それでも何度も立とうとしましたが駄目です。
電車が走り出します。
座ってしまった女性には「すみません」を言い続けました。
女性も事情は分かっているので怒らず、むしろ状況がおかしすぎて必死に笑いをこらえています。
彼女だけでなく、まぬけな私に気付いた乗客の誰もが爆笑したいのを苦しそうにこらえています。
私だって他人事で笑いたい、でも今は自分の問題です。
急行なので下北沢まで停まりません。
その間の長いこと。
一体何をしていればいいのでしょう。
女性にあやまる以外、「どちらまでですか」「趣味は何ですか」など、話しかけるのは変です。
リラックスしてもたれるのも変、寝るのも変です。
胸に抱いた鞄から本を出して読むのも変です。
そもそも状況が変なので、何をやっても変なのです。
女性と接しているお尻や太腿から女性の体温が上ってきます。
それを感じては失礼と思い、尻と太腿を鉄板にするイメージで力を入れました。
ただただ苦痛な時間でした。
以上、私の密な体験でした。
暑い日にあえて熱いお茶を飲んで涼しさを感じるように、
蜜を避ける日々にわざわざ密な話で……、あ、どうにもならないか。
せめて息抜きに。
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