痛みの認識
慢性腰痛を抱えている人は「この動きをすると痛いはず」、「こうすると症状が悪化する」と、いつの間にか動きと症状をイコールにしてしまっていることがあります。しかし、実際に細かく検査してみると「痛みが出るはずの動きで腰痛が起こらないこともある」ということが多いのです。
必ず痛みが出ると認識している状態と、痛みが出ないこともあると認識している状態には大きな隔たりがあるため、実際の現実と思考のバランスを取っていきます。
これによって自分の抱えている慢性的な痛みを正しく評価できるようになり、徐々に痛みが消えていくのが認知行動療法です。



　　　脳の誤作動
ある調査では腰痛のある男女に、脳の誤作動についての認知行動療法を4週間受けるグループ、生理食塩水を皮下注射する偽薬グループ、一般的な痛みの治療を受けるグループに分け追跡調査を行いました。
その結果、脳の誤作動についての認知行動療法のグループは約70％で「腰痛が完全消失」あるいは「ほぼ消失」。
偽薬グループは約20％、一般的な治療を受けたグループは約10％のみだったそうです。
調査をおこなった人たちは「痛みを無害なものと捉え直すことで、脳の誤作動を中和、修正できる」としています。

　　具体的には
腰部の脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアがあっても全く痛みを感じない人もいます。反対に、画像診断で何ら異常がなくても腰痛を訴える人もいます。原因を突き止められない非特異的腰痛(原因不明の腰痛)という診断になってしまいます。
「痛み」が起こるメカニズムの中で大きな役割を担うのが脳。例えば指をカッターで切ってしまうと、感覚器からの電気信号が神経を通じて脳に送られ「皮膚や筋肉が傷ついた」という事態を脳が把握し、初めて痛みを感じることができます。しかし、身体が傷ついていなくても、途中の神経の異常によって痛みを感じたり、脳の異常によって痛みを感じたりすることもあります。



　　　心因性などストレスも原因
腰痛の原因は実際には様々で、複数の原因が重なっていることも少なくありません。
大きく分けると①腰の骨や筋肉などに異常がある場合、②ほかの病気などによって生じる場合、③心因性など非器質性の場合。そして、やっかいなのは腰痛と器質的異常が必ずしも結びつかないことです。
非器質的な腰痛とは、まさに脳の異常に起因するもので、例えば強いストレスを長期間受けていると、腰に異常が無くても、腰痛と訴えるケースが多いことが知られています。
痛みをブロックする身体の防御システムがうまく動かなくなることによって痛みが増したり、長引いたりするんですね。

　　　まとめ
「痛いから何もできない」ではなく「痛くてもできることはある」
「ずっと痛い」ではなく「よく考えたら痛くないときもある」と、ネガティブからポジティブへ少しだけ考えを変えていきましょう。
できることを少しずつ増やしていき、行動範囲も少しずつ広げていけば、思っているよりも身体は大丈夫だなと脳を書き換えことができます。
認知行動療法は難しいものではありません。少しずつ時間をかけ、焦ることなく続けていれば、今悩まされている辛い腰痛も改善されてくるかもしれませんね。
そして、私たちのマッサージで改善のお手伝いができれば施術者として嬉しく思います。